2009年02月15日

おすすめハードボイルド『ウィチャリー家の女』ロス・マクドナルド (著)

女の名はフィービ・ウィチャリー。二十一歳。
彼女は霧深いサンフランシスコ波止場から姿を消し、杳として行方が知れなかった。
彼女の父から娘の調査を依頼されたアーチャーのこころには、何故かフィービの美しく暗い翳が重くのしかかっていた……。

アメリカ家庭の悲劇を描くハードボイルド派巨匠の最高傑作!

米ハードボイルド界を代表するロス・マクの「さむけ」と並ぶ代表作。

話はある家から失踪した娘の跡をアーチャーが追うという典型的なハードボイルド風なのだが、「さむけ」と同様、作者はある趣向を用意している。
追跡するアーチャーが娘の痕跡を辿るうち、暗い翳を感じるのだが、これが上記の趣向にも繋がるし、本作のテーマである家族の問題にも繋がる。


まず一番に挙げたいのが人物描写の素晴らしさです。
適格で簡潔明瞭な描写によって、登場人物が活き活きしています。
特に失踪した母娘が、どれほど似ていたかが会話によって明かされて行く場面は、圧巻です。

欲に負けてしまう人間の弱さ、哀しみ。
状況を改善しようとした行動が蹉跌となる絶望、無力感。
愚かで無力で、小さく哀しく、孤独で弱い人間たちのドラマです。

一流の娯楽作品であり、それ以上の物が確かにあります。


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ウィチャリー家の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1)






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2009年02月14日

おすすめハードボイルド『さむけ』ロス・マクドナルド (著)

本書は素晴らしい。

ロス・マクは米ハードボイルド界を代表する作家である。
本作も新婚早々の妻が失踪するところから始まり、典型的なハードボイルドの展開を見せる。
読者もそのつもりで読んで行くと、最後に本格の趣向が待っているという凝りに凝った構成の作品である。


かつて、こんなに本格に近づいたハードボイルドがあっただろうか。

いや驚きはそれだけではない。
本書の扱っているテーマには人間の弱さを見せつけられてしまった。
親と子の悲劇。次々とあらわれる登場人物たちの内面には、悲劇がすみついているのだ。
これほど大胆に展開する人間のエゴをぼくは知らない。

本書の真相は戦慄そのものである。
構成の巧みさと、意外性のあるストーリー展開がほんとうに素晴らしかった。

ラストには、心底ぞおーっとして、戦慄させられました。
ラストはまさに“さむけ”です。


ハードボイルドか本格推理か、などと言うジャンルを超えて、「ミステリ」カテゴリーの中での最高傑作が本作だと思う。
人物描写のすさまじさ、ミスディレクションの自然さ、ストーリー展開の吸引力、ラストのインパクトの凄さ。

超一級品。


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おすすめ名作サスペンス『幻の女』ウイリアム・アイリッシュ (著)

江戸川乱歩も絶賛!!

1964年ウイリアム・アイリッシュの代表作。

1991年度早川書房編の『ミステリー・ハンドブック』の『読者の選ぶ海外ミステリー・ベスト100』において、断トツのトップを獲得している。
さすがは名作で、文章表現が実に映像的。
書き出しの『夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、・・・』などは詩的ですらある。


妻を殺された主人公の男が、妻殺しの犯人として逮捕されてしまい、死刑執行までにその男の親友が、主人公に代わって主人公のアリバイを証明できる唯一の証人(幻の女)を捜す話です。

幻の女を巡るダイナミックな追跡劇をはじめ、サスペンスの盛り上げ方が非常に上手い作品です。
今読んでもその面白さはまったく色褪せていません。
タイムリミットの設定、魅惑のキャラクター、二転三転するストーリーと、娯楽作品の王道的展開のなかにも、アイリッシュ独特の文学的リリシズムが都会に生きる男女のほろ苦い人生を浮き彫りにし、物語に奥行きをもたらしています。

男と女の哀愁が深い余韻を残す傑作サスペンスです。



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おすすめ名作古典ミステリー『僧正殺人事件』ヴァン・ダイン (著)

コック・ロビンを殺したのはたあれ。
「わたしだわ」と、雀がいった!

マザーグースの童謡につれて、その歌詞のとおりに怪奇残虐をきわめた連続殺人劇が発生する。
無邪気な童謡と無気味な殺人という鬼気せまるとり合せ! 
名探偵ヴァンスの頭脳は冴えて、一歩ずつ犯人を追いつめる。『グリーン家殺人事件』と比肩される本格派の巨編である。


もはや超古典的作品といっても過言でないかもしれません。
けれども面白い!

知性の塊で、ともすると嫌みなヴァンスのキャラは引き立っています。
ペダンティックな彩りで貫き通された独特の雰囲気が、これまたいい味を出していますが、
このような古典的作品がもっと日の目を浴びてもいいかなと思います。



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僧正殺人事件 (創元推理文庫)





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おすすめ名作古典ミステリー『グリーン家殺人事件』ヴァン・ダイン (著)

ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。
この事件をかわきりに、一家のみな殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。
神のごときファイロ・ヴァンス探偵にも、さすがに焦慮の色が加わった。

一ダースにのぼる著者の作品中でも、一、二を争うといわれる超A級の名作。

たとえ「翻訳物ってカタカナの名前が覚えられない」と敬遠している人でも、この本は大丈夫。
昨今の推理小説のいささか過剰なタイトルからすると地味な印象ですが、中身はどうしてどうして、ショッキングな資産家連続殺人なのです。

惨劇の舞台となるグリーン家の人々は個性が強烈な人々で、複雑な血縁関係が展開しているわけでもないので、カタカナが苦手でいちいち登場人物一覧を読み返すのが辛い、という方でも未亡人・兄・弟・妹・養女・医者・メイド・料理女・執事と、これだけ覚えれば問題なし。
人物描写もさることながら、屋敷の重苦しく暗い雰囲気も抜群。古き良き時代の名作です。


すべての状況証拠を列挙し読者に解答を求める知的推理ものの先駆け的作品。


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グリーン家殺人事件 (創元推理文庫 103-3)





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おすすめ名作古典ミステリー「そして誰もいなくなった」アガサ クリスティー (著)

さまざまな職業、年齢、経歴の十人がU・N・オーエンと名乗る富豪からインディアン島に招待された。
しかし、肝心の招待主は姿を見せず、客たちが立派な食卓についたとき、どこからともなく客たちの過去の犯罪を告発してゆく声が響いてきた。
そして童謡のとおりに、一人また一人と…

ミステリの女王の最高傑作。

マザー・グースのメロディに沿って次々に起こる連続殺人を扱った本書は、上質な心理サスペンスが味わえる第一級のミステリー作品で、アガサ・ク リスティー作品中のみならず、ミステリー作品中の最高傑作である。


本格ミステリの原点であり、未だに世界中のミステリ作家に影響を及ぼし続けている、ミステリーの古典中の古典。

本書のプロットを基軸に書かれたミステリ多数。
本書へのオマージュとして書かれたミステリ多数。
本書をパロディ化して書かれたミステリ多数。

この本を読まずしてミステリを語る事なかれ。


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そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)





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おすすめ名作古典ミステリー「オリエント急行の殺人」アガサ クリスティー (著)

ポアロは、「灰色脳細胞」を働かせて謎解きに挑戦する。大胆なトリックと意外な結末……。

厳冬の中部ヨーロッパ
大雪のため立ち往生していたオリエント急行、フランスのカレー行き寝台車両の個室の中で、初老のアメリカ人富豪が全身12ヶ所に刺し傷を受けて死んでいた。
窓は開け放されていたが、犯人が外から侵入した形跡も、脱出した様子もない。

旅行に不向きな真冬にもかかわらず、その車両の個室はすべてふさがっていた。
同じ車両に乗り合わせた乗客は、さまざまな国籍の、職業も年齢も異なる14人。

彼らには確固としたアリバイがあった。
密室状況で起きた、この奇妙な事件に遭遇したポアロは、「灰色脳細胞」を働かせて謎解きに挑戦する。
大胆なトリックと意外な結末……。

ポアロが登場する作品のひとつで “ミステリーの女王” アガサ・クリスティの代表的傑作。


クリスティーの探偵小説の最大の魅力は その文学性にある。
この点 で 彼女の探偵小説は 凡百の探偵小説から傑出している。

本作は 間違いなく彼女のマスターピースの一つである。
未だ読んだ ことがない人の為に 結末を書けないのが残念だが ポアロが二つの解決策を出す所が何とも言えず 文学的である。

オリエント急行に乗り込んでいるセレブたちでの事件である。

そんな ゴージャスな雰囲気も魅力だ。
この作品の映画化も成功したことで知られている。 


さー、あなたも急いでオリエント急行にどうぞご乗車ください。


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オリエント急行の殺人




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オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)





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おすすめ名作古典ミステリー「Yの悲劇」エラリー・クイーン (著)

古今東西、ミステリのオールタイム・ベスト投票なんかをすると、いつ何時でも上位に入ってくる恐るべき作品。

行方不明をつたえられた富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの湾口に揚がった。
死因は毒物死で、その後、病毒遺伝の一族のあいだに、目をおおう惨劇がくり返される。
名探偵レーンの推理では、あり得ない人物が犯人なのだが……。

エラリー・クイーンのバーナビー・ロス名義による悲劇四部作の一つと言うよりは、『Xの悲劇』ともども完全に一人立ちし、ミステリ史上にその名をはせるようになった本書『Yの悲劇』は、その緻密な構成と犯人の意外性から、数多くの賞賛を浴びてきました。

残念ながら今日の欧米におけるエラリー・クイーンの評価は、謎解きが数学の証明をするがごとく行われる作品が敬遠されやすいことからか、あまりかんばしくないそうです。
ただし日本においてはその評価は依然高く、現在活躍している国内作家達にも多大な影響を及ぼしてきました。

ロス名義で発表した四部作の中でも、周到な伏線と、明晰な解明の論理は読者を魅了する古典的名作。


雰囲気こそ異様だが、論理展開の鮮やかさはいつものクィーンである。
この異様さの中で読者の気が逸れているうちに、真相へのデータを晒す手腕も鮮やかである。
犯人設定も、昨今は現実が小説を追い越している感もあるが、意外感がある。

私の中では、ここ40年程変わらないNo.1ミステリ。


ミステリーの古典的名作。定番中の定番だ。


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Yの悲劇




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Yの悲劇 (創元推理文庫 104-2)






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2009年02月12日

おすすめ本格ミステリー『女王国の城』有栖川有栖(著)

2008年 第8回本格ミステリ大賞受賞作品。

著者の名前、有栖川有栖は「ありすがわ ありす」と読む。(主人公の名前でもある。)


舞台は、急成長の途上にある宗教団体“人類協会”の聖地、神倉。
大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。

室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。
様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。

“城”と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。
外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し…。

江神シリーズ待望の書き下ろし第四長編


ファンの誰もが待ちわびた、実に15年ぶりの江神二郎(もしくは学生アリス)シリーズ最新刊である。

その間に世の中は平成となり、21世紀となったが、彼らはまだバブル華やかなりし頃にいる。
今回の舞台はそのバブルを背景に作られた、宇宙人をあがめる新興宗教の本拠地である「城」と「城下町」という、特殊な閉ざされた環境下にある山間の街である。

宇宙人だの新興宗教だのが出てくるというとひく人もいるだろうが、あくまでも物語の道具立てとしてであって(おそらく作者はこれらに懐疑的な人と思われるし)、メインはそこで起こった殺人事件と、警察に通報できず「城」に閉じ込められてしまったEMCの面々の推理と冒険(?)である。
奇をてらったわけではなく、実にストレートな本格ミステリだと思う。「読者への挑戦」も健在である。

500ページにも渡る長さだが筆の運びはやはりうまい。一気に読んでしまった。

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女王国の城




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女王国の城 (創元クライム・クラブ)






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おすすめ本格ミステリー『シャドウ』道尾秀介(著)

2007年 第7回本格ミステリ大賞受賞作品。

――ゴミ箱なんて、覗くもんじゃない。

小学五年生の我茂凰介は、母親を癌で亡くす。
幼なじみの水城亜紀の家にも不幸は伝染する。
亜紀の母親が遺書を残して墜死したのだ。

大学病院の精神科病棟に勤務する二人の父親は、互いに相手の狂気を疑い始める。
事件に関するささいな疑惑が二組の父子の精神を蝕み、不幸はさらに連鎖して……。

本格ミステリ界に新風を吹き込んだ若手作家が贈る“家族”をテーマにした驚異的な本格ミステリ。


人間は、死んだらどうなるの?―いなくなるのよ―いなくなって、どうなるの?―いなくなって、それだけなの―。

その会話から三年後、鳳介の母はこの世を去った。
父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。
夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。

そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが…。

父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?

話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作。

静かな筆致なのに力強いリーダビリティで、物語世界を次々に繰り出します。
すっかりある 人物に疑いをかけたままラストまで引っ張られました。

「やられた!」とは思うのですが、裏切られたというより物語を楽しませてもらったという満足感です。


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シャドウ




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シャドウ (ミステリ・フロンティア)





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