2010年12月19日

★おすすめのミステリー小説「水魑(みづち)の如き沈むもの」三津田 信三 (著)

●このミステリーがすごい(2010年)
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第7位「水魑(みづち)の如き沈むもの」三津田 信三 (著)



刀城言耶シリーズ書き下ろし長編!

近畿地方のとある農村。

村の人々が畏怖し称えてきたのは、源泉である湖の神・水魑様だった。

刀城言耶は祖父江偲とともに水魑様の特殊な儀式を観に行ったのだが、その最中、事件は起こる。

神男と呼ばれる儀式の主役が湖の船上で死体となって見つかったのだ。

犯人は見つからない。衆人環視ともいえる湖上の船、不可解な状況での事件だった。

惨劇はそれだけにとどまらない。

儀式を司る村の宮司たちが、次々に不可解な状況で殺されていく。

二転三転のすえに示された真犯人とは……。



雨乞いの儀式の最中、衆人環視の密室状況の湖で、儀式を執り行っていた〈神男〉が何者かに殺害される。

その後も、儀式を主宰する神社の宮司たちが次々と殺され……。



衆人環視の密室状況下での殺人という不可能犯罪の真相はシンプルかつ明快。

なぜ、 わざわざ儀式の際に殺すのかという問いにも、必然性のある答えが用意されています。

また、事件後にある人物が思わず漏らした「まさか××まで、水魑様の生贄に……」 という台詞にトリプル・ミーニングを仕掛けることで、真相の伏線を張ると同時に、儀式 の異形性を浮き彫りにしているのも秀逸です。


言耶は、事件全体を推理する際、犯人の条件を七つ上げ、それをもとに消去法で犯人を 特定しようとしますが、後から事実誤認が判明したり、データの追加があったりするので、 いつも通り、事件の構図は二転三転とめまぐるしく変っていきます。

その上、編集者の祖父江偲が視点人物となった章で彼女が遭遇する怪異には、結末に至っても合理的解決がなされず、謎が投げ出されたままの状態で物語の幕が閉じます。


本作の登場人物のなかには『厭魅の如き憑くもの』に登場した一族の血縁者と思しき人物 がいるので、もしかすると“神と神との相剋”というホラーの文脈で、本作のカタストロフィは 読み解けるのかもしれません。



民俗ホラーとミステリの面白さを兼ね備えた 「刀城言耶」シリーズの第5作にして、 2009年12月発表の最新作です。

舞台は、終戦から10年位後の、 奈良県波美(はみ)地方。

ここを流れる深通(みつ)川に沿って、 水使(みずし)・水内(みずうち)・ 水庭(すいば)・水分(みくまり)の四神社が点在し、 持ち回りで雨乞いの儀が行われています。
(この儀式で祀り上げられるのが、 題名にもなっている、「水魑(みずち)」様です)


刀城言耶は、その儀式に立ち会う機会を得ますが、 儀式の中心人物、「神男」を務める男性が、 湖に浮かべた屋形船の中で、 刺殺死体となって発見されます。

状況は誰も近づくことのできない、密室状態…。

そしてこの儀式では、 13年前にも同じような不可解な死亡事件が起きていたのでした。


このシリーズ、怪異現象の描写が盛り込まれ、 ホラーの雰囲気を味わいながら、 ミステリも楽しめるという優れもの。

ホラー部分は、不可解な状況のまま終わりますが、 ミステリ部分は、きっちりと合理的解決でまとめてくれます。


本作品でも、密室トリックはきちんと存在し、 雨乞いの儀という特殊状況下を 巧く活かしたトリックを楽しむことができます。

また、後半の刀城言耶の推理は、 真相に辿り着くまでに二転三転し、 一体どんな真相が待ち受けているのか、 ハラハラしながら読み進めることができます。

さらに、作者の文章力が充実してきたのか、 一作ごとにこなれてきて、 小難しい民俗学的用語を多用しながらも、 読みやすくなってきているところが このシリーズのファンとしては嬉しいところです。



日本の古い歴史的なものに興味があり、 ミステリもお好きな方には、 是非とも読んでいただきたいシリーズです。

一作一作は独立しているので、 どの作品から読んでみても良いかと思います。


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posted by ホーライ at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ホラー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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