2011年12月04日

おすすめのミステリー★2011年度ミステリーベスト10(週間文春)●第2位「折れた竜骨」米澤 穂信 (著)

ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。

その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。

ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた……。


自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、「走狗(ミニオン)」候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年――

そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ? 


魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?

現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場!



「理性と論理は魔術をも打ち破る。必ず。そう信じることだ」(p100)。

魔術が跳梁跋扈する12世紀末欧州での殺人事件を、同じく魔術の心得がある騎士が推理する>という舞台で描かれたのは、魔術を踏み台とした論理と理性の賛歌です。

まず、魔術が絡んだ「何でもあり」に見える謎が急所を突いた簡潔な論理で見事に解かれ、その時読者の脳裏に浮かび上がる画の魅力が素晴らしい。

<二十年に渡り囚われ続けた不死の青年は、いかにして塔の牢獄という密室から脱出したのか?>

<蝋燭に火を灯せば姿を消せる、魔法の燭台を持つ盗賊のアリバイをどう証明する?>

謎は魔術によって怪しく彩られ、その分だけ、解き明かす論理の冴えを引き立てます。



しかしそれにも増して、解かれることで、各人の謎が各人の人間性や背景を鮮やかに語ることがこの作品のより大きな魅力。

例えば、解明と共に明らかになる「いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち」の内、幾人かの意地と屈折と誇りを目にしたとき、読者は彼らを好きにならずにはいられないと思います。

また、(詳細は省きますが)この作品は容疑者が魔術によって「走狗」とされていることにより、ミステリとして、動機を問う「ホワイダニット(Why(had)DoneIt)を綺麗に取り除いている>ことに一つ妙味があるのですが、それによって喪われがちな物語の厚みをこうして補うところに、作者の技の冴えが感じられます。



そんなわけで、この作品は過去の米澤作品と比べてただ舞台設定だけでなく、その積極的な意志のあり方、描き方から見ても新境地であり、過去作品を踏まえるとなお面白く読めもする意欲作だと思います。

一方で、初米澤作品として勧めるにも十分過ぎるほどに楽しいミステリであり、冒険小説でもあり、少女と少年の成長物語でもあります。

『折れた竜骨』、傑作です。



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posted by ホーライ at 01:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 2011年ベストミステリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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