史上最大の諜報機関にして暗号学の最高峰、米国家安全保障局のスーパーコンピュータ「トランスレータ」が狙われる。
対テロ対策として開発され、一般市民の通信をも監視可能なこの存在は決して公に出来ない国家機密だった。
が、この状況に憤った元局員が、自ら開発した解読不可能な暗号ソフトを楯に「トランスレータ」の公表を迫る。
個人のプライバシーか、国家の安全保障か。
情報化時代のテロをスリリングに描いたスリラー。
訳者がいくつか修正をしたという日本に関する記述にはまだ違和感を感じるが、ご愛嬌の範囲内。
1998年の時点で、インターネットを通した国家による個人情報の監視の問題に目をつけた著者は鋭い。
情報の保護と公開という相反する命題は10年経った今も取り扱いが難しい。
どちらがが「善」なのか読みながら揺れる。
専門用語が出るが、訳者の力量の高さからか文章は最後まで読みやすい。
あなたなら、どうする? と突きつけられる命題には感服。
この本が「ダ・ヴィンチ・コード」の原点だ。
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